FUJIFILM X100 F
鶴の湯の広い駐車場に降り立った瞬間、たちまち時代がかった風景の一部に取り込まれてしまう。関所風の門柱の右手で、水車が音を立てながら回る。左手の「本陣」と称する長屋は、代々の秋田藩主が湯治に訪れた際に、警固の武士が詰めた宿舎の面影をとどめるもの。本陣の向かいは杉皮葺き湯治棟である。
(松田忠徳著「温泉教授の日本百名湯」より)
宿の前に立ったとき、これは時代劇、あるいはクロサワ映画のセットではないのか、と思ったのである。日本にまだこういう風景が現役のままあるのはうれしい。
泊り客の中に、夫婦と思しき海外からの旅行者がいたので、翌朝、露天風呂でどこから来たのかと尋ねると、「フランス」ということであった。
フランスからはるばるこういう宿に泊まりに来るとは、あっぱれである。
乳頭温泉郷。鶴の湯。