OLYMPUS STYLUS 1
まったく不動産というのは困ったものだ。地面から切り取って持ち運ぶわけにはいかない。地面に糊付けの財産である。だからビルの価値には地面の価値がしみ込んでいる。ビルというのは地面の価値の隆起した突起物だ。ビルを剥がしたって、またその地面にビルが生えてくる。
したがって不動産業者はビルやその他の建物のことを「上物」という。基本はあくまで土地であり、建物はたまたまその季節に生えている野菜みたいなものなのだ。だから不動産業者は都市の農民である。土壌の豊かなところにビルを生やして収穫を上げる。豊かな土壌とは有機物の集中した土地のことであり、人口密度がそれをあらわしている。
(尾辻克彦 赤瀬川原平著「東京路上探検記」より)
少し前に亡くなった赤瀬川原平さんの、こういうユニークな発想が好きであった。
神様のお住まいも上物というのかどうか。