
RICOH GR DIGITAL
DVDで映画「アポロ13」を久しぶりに見ました。
16年前(1995年)の映画ですが、特撮の技術は高いし、感動的なストーリーで今でも見応えのある作品です。
物語はご承知のとおり、月着陸を目的に打ち上げられたロケット、アポロ13号に重大な事故が生じてしまい、目的は果たせなかったものの、乗り組んでいた3人の宇宙飛行士が奇跡的な生還を遂げる、というものです。
実話に基づく作品ですので、同じように宇宙飛行士が主人公の作品でも途中で見るのがアホらしくなってしまった「スペース・カウボーイ」(2000年)などとは感動の度合いがまったく違います。
主演はもちろんトム・ハンクス演じるラヴェル船長ですが、実はこの映画でもう一人の主役ともいえる「格好いい」人物はヒューストンで指揮を執るジーン・クランツ首席管制官(エド・ハリス)です。何が格好いいかといえば、その危機対処能力といおうか見事なまでのリーダーシップです。
アポロ13号に最初のトラブルが発生したとき、トラブルの原因についてあれこれ議論するスタッフに対してまず全員に冷静になるよう求め、一つ一つ報告を聞きます。そして
「当て推量で事を運び事態を悪くするな」
という指示を出します。これはあくまでもデータと事実に基づいて対策を立てよ、ということでしょう。
当初は月着陸を目指そうとするものの、無理だという部下の進言を聞き入れて中止を即決。
「飛行計画書は忘れろ。この現場で新しいプランを練る。3人を地球に戻す」
5分でも10分でも判断を遅らせるとそれだけ事態が悪化すると考えた、とDVDに納められたインタビューで本人自身が語っています。
月着陸船を地球帰還目的に使おうという案に、メーカー(グラマン社)の人間が、月着陸船はそんな目的で作られていないと難色を示すのに対しては
「残念ながら月着陸は流れた。設計の目的より、何に役立つかだ。そのことを忘れるな」
今取り組むべき最大の課題は何か。目的の明確化、といったところでしょうか。
最大の問題は燃料(酸素)漏れによる電源喪失であるとわかると、スイッチや電球にいたるまで、その設計に携わった人間、取り付けた人間、すべてのスタッフを集めて対策を練るよう指示。
「1アンペアでも電源を節減しろ」
問題を絞り込んだら、そこに全力を注ぐのが重要ということです。
さらに
「おれの担当で飛行士は殺さないぞ」
という一言。これは仕事に対して強い信念と誇りと自信を持っていることがうかがえます。
地球の大気圏再突入に向けて、司令船を再起動する手順書を早くくれと焦る乗組員に、まだ完成していないため、とまどうスタッフを
「固まっている部分だけでいい。今すぐ手順を送ってやるんだ!」
とこのときだけは大きな声を出します。パニック寸前の、情報を持たない人々(乗組員)を安心させるためにはできる限り情報を提供してやることが肝心ということでしょう。
などなど、この方の指示ぶりは危機に際してリーダーはかくあるべきという理想を見る思いです。実際、本物のジーン首席管制官も人望のあるリーダーだったそうです。
ま、しょせんは映画ですし、そういう見方をするのはどうかと思いますが、今の日本の状況が状況だけに、どうしても無意識のうちにジーン首席管制官とどこかの国の総理大臣とを、リーダシップという点で比較しながら見てしまったのでありました。
ひょっとすると今、日本人すべてがアポロ13号の乗組員なのかもしれませんし。