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JR紀勢本線湯浅駅付近。広川を渡る特急くろしお。
「日本の写真」という、これはずいぶん前に姫路市立美術館で行われた展覧会で買った図録、を久々に開いて見ていると、明治30年頃に撮られた古い写真の中に、「安部川鉄橋上り列車進行中之図」という作品があった。撮影者は徳川慶喜とある。
徳川慶喜が写真に興味を持っていたことは有名で、日本におけるアマチュア写真家のはしりとされたりする人だから、考えてみれば「最後の将軍」は「最初のアマチュア鉄道写真家」でもあったのかもしれないなあ、とは見ながら思ったことである。
で、要するに、列車が鉄橋を渡る図というのは明治以来、ずっと写真の格好の題材であり続けているわけだ。カメラの技術がどんどん進み、走る列車も変わったけど、その光景を写真に収めたいというアマチュア写真家の気持ちは今も昔も相変わらずということである。もちろん上手い下手も相変わらずあるし、自分が撮った写真などは、ただ撮っただけ、という程度のものだけど。
とはいえ、たとえ下手でもとりあえず撮っておけば記録としての価値は多少はある。かもしれない。たとえば鉄橋時代の余部橋梁を渡る列車の写真(
これと
これなど)は今では絶対に撮れない写真である。