Leica M2 Elmar 50mm F2.8
梅田というのは、御年輩の方は皆ご存じですが、大阪駅のことです。
大阪駅の位置は、はじめ大阪の中心地の堂島あたりに設定する筈であったのだそうですが、地元から「火を吐く岡蒸機はいやや」というはげしい反対があって、市外の、摂津の国西成郡曾根崎村梅田三昧に建設することに変更になり、これが現在の大阪駅の在るところで、それ以来、大阪の駅は長く、梅田々々と呼びならわされて来たものだそうであります。
(阿川弘之著「空旅・船旅・汽車の旅」より)
大阪駅に限らず、旧国鉄が線路を敷き始めた頃、こういうことはよくあったらしい。そのおかげで、
近江八幡のように、結果として古い町並みが保存されることに繋がったところも多い。
私鉄が敷かれる頃になると、鉄道アレルギーはもうないから、町の中心部や便利な場所に駅がつくられるようになり、結果としてJR(旧国鉄)よりも私鉄の駅前の方が賑わっている、という景色が多く生まれることになった。もちろん、私鉄が沿線の開発や商業施設の誘致に力を入れたためもあるだろうし、それにJR(旧国鉄)には貨物輸送という任務もあったからに違いない。
貨物輸送といえば自分が子供の頃、尼崎駅のすぐ前にあるのは引き込み線のある巨大なビール工場であったし、市内には今の線路とは別に貨物用の線路が走っていた。駅構内で貨物の連結作業が行われることも多かった。
しかし工場の移転や鉄道貨物の減少に伴い、それらももう記憶の中だけの風景になった。貨物用線路の廃線跡の細長い敷地には建売の住宅が並んでいる。
この写真の線路も以前は城東貨物線といったが、もうすぐ貨物専用線ではなくなる。
2010年。今はなき梅田貨物駅。