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5月に大阪市内、九条のあたりを歩いたとき、このヌード劇場がすでに閉館になっていることを知った。写真の看板は撤去されてなくなっており、扉には次の入居者を求める貼紙が貼ってあったのである。道頓堀劇場の閉鎖と違って、さすがにこちらはマスコミも話題にしにくいか。
別にこういう劇場には興味がないのだが(ホントの話)、それなりに有名な劇場であったから、ちょっと寂しい気がしないでもない。ここで働いていた方たちはちゃんと次の仕事は見つかったのであろうか。
こういう劇場に興味がないとは書いたが、これまでに一度も行ったことがないかといえば、恥ずかしながら一度だけある。遠い昔、若かりし頃、大学時代の友人と島根県を旅行したとき、ある温泉街で入ったのである。
劇場といっても古い木造民家の2階で、恐らく昼間は普通の家として使っている畳敷きの部屋であった。客は自分と友人の2人だけ。音楽は部屋の片隅に置いてある、電蓄と呼びたくなるプレーヤーの上で回るレコード1枚のみ。簡素な照明の中に登場したダンサーは、劇場前に立つ呼び込みのおじさんが「うちの踊り娘は28やで」といっていたのが、それはどうやら年齢ではなく明治28年生まれのことであったか、いやさすがにそれはないから昭和28年生まれ・・にも見えないからサバを読んで昭和18年生まれという意味であったかと察せられる、思わず目をそらしたくなるおばさんばかり2、3人なのであった。
始まってしまうと帰るに帰れず、思わず目をそむけていると、隣の友人が「ここで目をそらしては踊っている方に失礼や」というので、確かにそれもそうだと、じっと我慢して畳の上で心頭滅却、しばし修行のような時間を過ごしたのであった。
翌朝、二人で温泉街を駅に向かって歩いていると、どこかで見たおばさんがスーパーの袋を買い物かごに入れて自転車で走って来るので、誰かと思ったら昨夜踊っていた方なのであった。
あの劇場は今もあるのかどうか。
2009年撮影。