MINOLTA X-700
峠という言葉をある辞書でひくと、山の稜線の低くなっている部分、とあって、知ったときはけっこう意外な感じがしたものだ。なにしろ、普通は峠が一番高くて苦しいところであるから。
とはいえ、たしかに頂を越すよりはましである。
司馬遼太郎の作品に「峠」という、長岡藩の河井継之助を主人公にした有名な作品がある。
読んだのは学生時代のことだが、新潮文庫版では上下2冊に別れていて、この作品はその境目にタイトル通り大きな峠がある、というのが友人の感想であった。つまり上巻はつらい登りだが下巻に入ると一気に面白く読めるという意味だ。自分は最初から最後まで面白く読んだ記憶があるので、その峠はわからなかった。
写真は上高地の徳本峠(とくごうとうげ)から見た穂高連峰。かのウォルター・ウェストンが日本を離れることになったとき、この峠から、涙ながらに穂高を眺めていたそうである。この峠から、というのは、当時は上高地を訪れるには必ず徳本峠を越えなければならなかったからだ。今、わざわざこのルートをとる人は少ない。
自分がこの峠に立ったのは1990年の秋のことであった。