Nikon D700 SIGMA 24-135mm F2.8-4.5
関西に縁のない方はあまりご存じないと思うが、尼崎市の住人に、ちょっと砕けた感じで「どちらにお住まいですか」と尋ねるとそのほとんどが「アマですわあ」とお答えになる。尼崎市は通称「アマ」である。
「アマ」には、同じ兵庫県でも、隣接する西宮市や伊丹市とはちょっと異なった、独特のニュアンスがある。
つまり、阪神工業地帯の中核を担う工業都市であり、下町であり、労働者の町であり、またかつては公害の町でもあった。同時に庶民的、人情的な町のイメージも漂う。兵庫県内でこういう町は他にないといっていい。
どちかといえば兵庫県というよりも大阪府の海岸部にある工業都市という印象だろうか。事実、経済的に大阪との繋がりが深いため、電話の市外局番は大阪市と同じ06である。
自分は尼崎で生まれ育った人間だが、芦屋に移り住んで約10年になる。
いずれも兵庫県にありながら、「どちらにお住まいですか」という質問に「アマですわあ」と答えるとのと「芦屋ですう」と答えるのとでは質問者の受け取るイメージは大きく異なる。芦屋はよく知られた高級住宅街のある、まったく純粋な住宅都市である。
「アマ」と、いわゆる「芦屋ブランド」との間には歴然としたイメージの差があるのだ。
しかし、芦屋は比較的最近まで村だったのに対し、尼崎は古代から交通の要衝であり、江戸時代には五万石の城下町であった。自分が子どもの頃は人口55万を誇る、兵庫県第2の都市であった。
現在は第4の都市に下がっているが、鉄道路線図を見ると明らかなように、今もなお兵庫県内の交通の要衝である。
近頃は工場が減る一方、再開発が進み、工場の跡地に大きなショッピングセンターやマンションなどが次々と建っている。生活するうえでは実に便利な町である。
ゆえに、尼崎出身の自分がもし「アマ」に戻れといわれると、芦屋ブランドをとるか、尼崎市が持つその生活上の利便性の高さをとるか、大いに迷うのが正直なところだ。
などと、こんなことを書いたのは、久しぶりにもう一度尼崎に住むということについて、まだ仮定の話だが、考えてみたからである。
写真は西宮市内の神社で。