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2011年 05月 18日
13番の客
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RICOH GR DIGITAL

DVDで映画「アポロ13」を久しぶりに見ました。
16年前(1995年)の映画ですが、特撮の技術は高いし、感動的なストーリーで今でも見応えのある作品です。
物語はご承知のとおり、月着陸を目的に打ち上げられたロケット、アポロ13号に重大な事故が生じてしまい、目的は果たせなかったものの、乗り組んでいた3人の宇宙飛行士が奇跡的な生還を遂げる、というものです。
実話に基づく作品ですので、同じように宇宙飛行士が主人公の作品でも途中で見るのがアホらしくなってしまった「スペース・カウボーイ」(2000年)などとは感動の度合いがまったく違います。

主演はもちろんトム・ハンクス演じるラヴェル船長ですが、実はこの映画でもう一人の主役ともいえる「格好いい」人物はヒューストンで指揮を執るジーン・クランツ首席管制官(エド・ハリス)です。何が格好いいかといえば、その危機対処能力といおうか見事なまでのリーダーシップです。

アポロ13号に最初のトラブルが発生したとき、トラブルの原因についてあれこれ議論するスタッフに対してまず全員に冷静になるよう求め、一つ一つ報告を聞きます。そして
「当て推量で事を運び事態を悪くするな」
という指示を出します。これはあくまでもデータと事実に基づいて対策を立てよ、ということでしょう。
当初は月着陸を目指そうとするものの、無理だという部下の進言を聞き入れて中止を即決。
「飛行計画書は忘れろ。この現場で新しいプランを練る。3人を地球に戻す」
5分でも10分でも判断を遅らせるとそれだけ事態が悪化すると考えた、とDVDに納められたインタビューで本人自身が語っています。
月着陸船を地球帰還目的に使おうという案に、メーカー(グラマン社)の人間が、月着陸船はそんな目的で作られていないと難色を示すのに対しては
「残念ながら月着陸は流れた。設計の目的より、何に役立つかだ。そのことを忘れるな」
今取り組むべき最大の課題は何か。目的の明確化、といったところでしょうか。
最大の問題は燃料(酸素)漏れによる電源喪失であるとわかると、スイッチや電球にいたるまで、その設計に携わった人間、取り付けた人間、すべてのスタッフを集めて対策を練るよう指示。
「1アンペアでも電源を節減しろ」
問題を絞り込んだら、そこに全力を注ぐのが重要ということです。
さらに
「おれの担当で飛行士は殺さないぞ」
という一言。これは仕事に対して強い信念と誇りと自信を持っていることがうかがえます。
地球の大気圏再突入に向けて、司令船を再起動する手順書を早くくれと焦る乗組員に、まだ完成していないため、とまどうスタッフを
「固まっている部分だけでいい。今すぐ手順を送ってやるんだ!」
とこのときだけは大きな声を出します。パニック寸前の、情報を持たない人々(乗組員)を安心させるためにはできる限り情報を提供してやることが肝心ということでしょう。

などなど、この方の指示ぶりは危機に際してリーダーはかくあるべきという理想を見る思いです。実際、本物のジーン首席管制官も人望のあるリーダーだったそうです。
ま、しょせんは映画ですし、そういう見方をするのはどうかと思いますが、今の日本の状況が状況だけに、どうしても無意識のうちにジーン首席管制官とどこかの国の総理大臣とを、リーダシップという点で比較しながら見てしまったのでありました。
ひょっとすると今、日本人すべてがアポロ13号の乗組員なのかもしれませんし。



by tajiri8jp | 2011-05-18 19:43 | RICOH GR DIGITAL | Comments(14)
Commented by TOMOWL at 2011-05-18 21:08 x
素晴らしい文章とその内容に感動してしまいました。

確かに不安な我々乗組員は外を覗かずにはいられないのかもしれません。
Commented by reema at 2011-05-19 00:16 x
アポロ13は大好きな映画で今も時々見ていますが、
ジーン・クランツ氏のようなリーダーシップを発揮できるような人、
今の日本にはいなさそうです。
こちらの13号は帰還できるのでしょうか・・・
Commented by auauoyaoya at 2011-05-19 00:22
こんばんは。

プロが集結して最後まであきらめなかったNASAと、後手後手でトップが逆ギレする政府の違いがよくわかりますね。


そして風邪のためアポロに乗れなかったせいで電力を確保するきっかけをつくったケンは、震災で被害を受けなかったみんなに復興のきっかけを与えてくれたような気がします。


撮影途中でバッテリー残量が無くなったときは泣きながら家に帰還しますが。
Commented by tajiri8jp at 2011-05-19 08:07
TOMOWLさま 
本当に、今はなんだかゆっくり落ち着いて座っていられない心境ですね。
Commented by tajiri8jp at 2011-05-19 08:10
reemaさま 
原発の事務所だとか、自衛隊、消防、警察、個別に見ればそれぞれ優秀な指揮官はきっといらっしゃると思います。問題は首相はじめ政治家の方々ですね。
帰還できなかったらエライ事です。
Commented by tajiri8jp at 2011-05-19 08:15
auauoyaoyaさま 
はは、確かにバッテリー不足で泣き泣き家に帰還したことが自分もあります(笑)。
アポロ13や今の日本は笑い事ではありませんが・・。
Commented by k7003 at 2011-05-20 12:47
いい映画を想い起こさせていただきました。どこかの元気のいい民放さん、いっそ東京XX提供で、流してくれませんか? ACで国民をバカにしている日本の民放が民から見捨てられない最後のチャンスだと思いますよ。
Commented by tajiri8jp at 2011-05-20 18:42
k7003 さま 
東京XX提供で放送、というのは面白いですね。官邸の方にも是非見てほしいです。
Commented by 不思議な世界旅行 at 2011-05-20 21:52 x
ちょうど最近撮りためたビデオを消化しているところでして
そろそろ来週あたりアポロ13の出番かというところです。
この記事を見て一段と楽しみになってきました。
Commented by tajiri8jp at 2011-05-20 22:08
不思議な世界旅行 さま 
そうですか。でも本当は自分のこの下手くそな文章を読まずにご覧になった方がより楽しめたかもしれませんね(笑)。もしそう思われたらごめんなさい、です。
Commented by moblue at 2011-05-21 10:46
写真、いいですねー
13番Bですか、。
Commented by tajiri8jp at 2011-05-21 11:23
moblue さま 
ありがとうございます。妻は13のAでした(笑)。
Commented by LUZeSOMBRA at 2021-07-15 19:57
10年経って、我が国におけるリーダーシップの欠如が浮き彫りになっていますね。
とても残念なことですが、我が民族にはそういう資質がないのだと思います。
Commented by tajiri8jp at 2021-07-16 07:46
LUZeSOMBRAさま
そうですね、おっしゃるとおり、残念ですがそのようです。
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